静電気モータ
通常のモータは電磁力を用いるのに対して、静電気によるクーロンの印力と斥力を利用したモータを静電気モータといいます。
静電気モータの歴史は古く18世紀から、さまざまな種類の静電気モータが考案されています。しかしそれらのおおくは力が小さくて、駆動に高電圧が必要であるため、試作程度におわり、実用化されませんでした。以降、「静電気力は弱い」ということがなかば常識となり、近年にいたるまで静電気モータは、実用性のないとされてきました。しかし、近年、半導体製造プロセスを用いたマイクロマシンが登場すると、さまざまな形のマイクロ静電気モータへの挑戦が始まりました。
微細化するほど力密度が向上
静電気モータがマイクロモータとして注目を浴びたのには、主に以下の2つの理由があります。(1)平面的な構造にして製造できるため、半導体プロセスの適用が用意であること、(2)電磁モータでは、単位体積当たり発生する力(力密度)が寸法によらず一定であると見積もられるのに対し、静電気モータは、モータ寸法を微細化するほと力密度が向上すると考えれる事です。
(2)は静電気力と電磁力の寸法による効果に関することですが、この寸法による効果は、静電気モータをとても優位にしています。従来、静電気モータは弱い力しかだせないものと考えられてきたわけですが、微細化時代の到来により静電気モータの力密度が向上するのであれば、微細化した静電気モータ要素を多数集積し結合することで、大出力の静電気モータも実現可能であると考えられるからです。
微細化時代のアクチュエータとして有望
ある開発事例では、電極を300個配置して重量当たりの出力を電磁モータの10倍にしたものが報告sれています。また、別の高出力静電気モータでは、FPCフィルム(フレキシブルプリント基板フィルム)を用いることで、効率良く微細静電モータ要素を集積し、静電気モータとしてはきわめて大きな出力を実現しています。
近年の各種メカトロニクス機器の小型化・高性能化に伴い、アクチュエータ(駆動機構)に対する要求も、多様化かつ高度化してきており、そのに伴って従来の電磁モータにはない新たな特徴・性能を有するアクチュエータとして、静電気力を用いた高出力モータが有望視されています。代表的なものとして、超高精度、強力、停止保持可能などの特長をもった静電リニアモータがあります。
また、モータではありませんが、静電チャックも工場などで良く使われるようになりました。静電チャックはクーロン力を利用した吸着システムです。保持する側の電極に電圧を印加すると、対象物の表面には逆電極の電荷が誘導されます。この電極と対象物の電荷により発生するクーロン力を用いて対象物を吸着します。最近は大型の液晶ガラスや半導体ウエハーを保持し、運搬するために多く利用されています。