静電気が起こすトラブル
静電気と言う言葉から、皆さんは何を連想するでしょうか。おそらく多くの人が連想するのは、空気が乾燥した季節に、玄関のドアを開けようとドアノブに手を伸ばした瞬間「バシッ」と衝撃が走る、いまいましい感電の事でしょう。
昔らか静電気による感電は、人から嫌われてきました。物体にたまった静電気が人体に向かって放電するとき、または人体にたまった静電気が物体に向かって放電するとき、人体が電気ショックを受けるからです。
ドアノブで感電しても命に別状はない
詳しくは後述しますが、ドアノブが金属製の場合、プラスに帯電した人が指を近づけると、導体である金属と指との間で静電誘導が起き、マイナスの電荷がドアノブの先端に集まり、プラスの電荷が指の先端に集まってきて、ドアノブと指との間の距離が短くなると、放電が始まり「バシッ」と感電するわけです。ドアノブがプラスチック製の場合は不導体なので静電誘導は起きず、したがって感電することはありません。
もっとも、ドアノブで感電くらいなら、多少の痛みはあっても命に別状はないので心配はいりません。しかし、電流の大きさや流る部位によっては人命にかかわることもあります。また高所作業中の場合は感電した衝撃による転落事故など、副次的な災害を引き起こすこともあります。
深刻な半導体破壊
静電気のトラブルで、とくに被害が深刻なのは半導体工場です。半導体は内部で微細な回路パターニングや配線を行っているため、静電気によるわずかな電流が流れてもパターンや配線部が溶断することがあります。最先端の半導体になると微細化がより進み、線幅30nm(ナノメータ)のパターンニングが登場し始めています。したがって、この微細パターンや微細配線部の溶断事故もますます頻発するようになっています。
また、半導体は微細構造化により絶縁耐力は低下し、静電気によるわずかな異常電圧がかかるだけでも絶縁破壊を起こしてしまいます。たとえば半導体センサーでは、その感度を上げるため薄膜化を極限まで進め、ついには原子1層分という薄膜さえ登場する時代になっていますが、静電気による外乱はもっとも嫌うところです。
このような傾向は半導体が微細化し、集積度が向上し、感度が上がってくるにつれてますます激しくなり、また半導体が高速化するにつれて激しくなる傾向にあります。